ギルス第2話3
最後のトンネルを抜けると、そこは広大な砂漠地帯だった。
ビュッケは言葉をなくしていた。
太陽と空と、砂ばかりの大地に敷かれた枕木、2本のレールだけが見える。
「・・ダイアナ・デザート。ここからずっとしばらくは砂漠地帯だ」
いつの間にか、機関士と助手は黒い布をかぶっていた。
紫外線が直接肌に届くので、人間はこの布を被らないと皮膚が病気になるという。
「そうなんだ・・」
砂漠の話はきいていたが、まさかそこに線路が通っているとは。
「昼間はものすごく暑くって、夜は北極並に寒い。人の住めたところじゃない。
それが作業員達の話だったよ。」
その通りで、人の気配はまったくない。
そもそも、こんな場所に線路が敷かれているのが不思議だった。
「でも・・ここのレールは誰が手入れするんだ?」
もっともな疑問だった。
「先住民達さ。」
ジョセフが答えた。
「え、・・誰かすんでるの?」
「そりゃさ、乗る人がいなけりゃ列車も通らないだろ?」
「そうだけど・・」
「この砂漠の地下に住んでるんだ」
「地下に!?」
「そうさ。」
「先住民達は、高度な科学文明を持っててさ。でも、他の国の人間から、ちょっと偏見を持たれてる。
第4次世界戦争が起きたとき、その国は滅んだことになってるんだけど、ここに国ごと避難してたんだよ。」
ビュッケは目を丸くした。
生まれていないので実感はないが、
一番新しい戦争で、起きてそんなに間がない。
「それ、みんなが知ってることなの?」
「いいや、ごく一部の人だけだ。・・ビュッケ、そろそろ嵐がくるぞ。しっかりつかまってろよ」
先ほどまで快晴だった空は、急に雲がかかって真っ暗になっていた。
突風が吹いてきた。
キイイ・・
突然、機関車の車輪が不穏な音を立て始めた。
「!」
機関士が声をかける。
「大丈夫か、シルバーデューク。」
彼は機関車に声をかけた。
ビュッケも異変に気づいていた。
機関車はなんとか前へ進もうとしたが、機関士はブレーキをかけた。
「無理をするんじゃない。今調べて来るからじっとしてろ!」
助手が機関室に残り、機関士は降りて点検を始めた。
車掌室に乗っていた作業員達が加勢する。
列車は一度そこで停止してしまった。
作業員がビュッケに黒い布をかぶせに来た。
「わっ前が見えない」
黒い雨が降り出した。
「我慢しな。この雨に当たったらとけちまうぞ」
「それって・・」
酸性雨のことだ。
「いい男がだいなしだ」
そう言うと、作業員は急いでシルバーデュークの点検に戻った。
雷がなる。
ビュッケは作業員達の話を思い出した。
「ギルスには12の都市があることは話しただろ?
で、今いくつの都市の話をしたか覚えてるか?」
「11個だね?」
ビュッケは答えた。
作業員はニヤリと笑った。
「最後の一つの話をしてよ」
小さな機関車は目を輝かせて聞いた。
「それは・・・」
もったいぶっておきながら、作業員たちは口ごもった。
「どうする、お前が話すか?」
「いや、お前が話せよ」
「いやいや、シュヴァルツに話させるべきだ」
「おれはいやだよ!」
「あのー・・・べつに話したくないんだったら聞かないけど。何かあるんだね?」
「ああ。そこを通ると・・」
「人間ばかりじゃなく、機械も調子をわるくする」
「だからなるべく、人々はそのエリアには近づかない。」
作業員達が話さなかった、スコーピオ駅
そこにあったのは広大な砂漠、ダイアナ・デザート。
その地下に眠る、12の都市・最後の都市。
偏見を受けて、滅ぼされかけて
避難してきた国の人々がそこで暮らしている。
さまざまな話が一つの答えとなって繋がりかけていた。
「・・ま、実際に見たわけじゃないし、会ったわけでもない。
そんなに気にすることかな」
ビュッケはつぶやいた。
それよりも、列車の方が心配だった。
・・じっちゃん、大丈夫かい?
呼びかける。
彼が何を考えているのかはわからなかったが、
何も言わない背中から、
・・よけいな心配をするんじゃない!
という声が聞こえてきそうだった。
実際、とても大丈夫には見えなかった。
シルバー・デューク号が動き出したのは3時間も後だった。
酸性雨の嵐がやみ、青い空と煌びやかな太陽が
再び砂の上に敷かれた枕木と二本のレールを照らした。
最後のトンネルを抜けると、そこは広大な砂漠地帯だった。
ビュッケは言葉をなくしていた。
太陽と空と、砂ばかりの大地に敷かれた枕木、2本のレールだけが見える。
「・・ダイアナ・デザート。ここからずっとしばらくは砂漠地帯だ」
いつの間にか、機関士と助手は黒い布をかぶっていた。
紫外線が直接肌に届くので、人間はこの布を被らないと皮膚が病気になるという。
「そうなんだ・・」
砂漠の話はきいていたが、まさかそこに線路が通っているとは。
「昼間はものすごく暑くって、夜は北極並に寒い。人の住めたところじゃない。
それが作業員達の話だったよ。」
その通りで、人の気配はまったくない。
そもそも、こんな場所に線路が敷かれているのが不思議だった。
「でも・・ここのレールは誰が手入れするんだ?」
もっともな疑問だった。
「先住民達さ。」
ジョセフが答えた。
「え、・・誰かすんでるの?」
「そりゃさ、乗る人がいなけりゃ列車も通らないだろ?」
「そうだけど・・」
「この砂漠の地下に住んでるんだ」
「地下に!?」
「そうさ。」
「先住民達は、高度な科学文明を持っててさ。でも、他の国の人間から、ちょっと偏見を持たれてる。
第4次世界戦争が起きたとき、その国は滅んだことになってるんだけど、ここに国ごと避難してたんだよ。」
ビュッケは目を丸くした。
生まれていないので実感はないが、
一番新しい戦争で、起きてそんなに間がない。
「それ、みんなが知ってることなの?」
「いいや、ごく一部の人だけだ。・・ビュッケ、そろそろ嵐がくるぞ。しっかりつかまってろよ」
先ほどまで快晴だった空は、急に雲がかかって真っ暗になっていた。
突風が吹いてきた。
キイイ・・
突然、機関車の車輪が不穏な音を立て始めた。
「!」
機関士が声をかける。
「大丈夫か、シルバーデューク。」
彼は機関車に声をかけた。
ビュッケも異変に気づいていた。
機関車はなんとか前へ進もうとしたが、機関士はブレーキをかけた。
「無理をするんじゃない。今調べて来るからじっとしてろ!」
助手が機関室に残り、機関士は降りて点検を始めた。
車掌室に乗っていた作業員達が加勢する。
列車は一度そこで停止してしまった。
作業員がビュッケに黒い布をかぶせに来た。
「わっ前が見えない」
黒い雨が降り出した。
「我慢しな。この雨に当たったらとけちまうぞ」
「それって・・」
酸性雨のことだ。
「いい男がだいなしだ」
そう言うと、作業員は急いでシルバーデュークの点検に戻った。
雷がなる。
ビュッケは作業員達の話を思い出した。
「ギルスには12の都市があることは話しただろ?
で、今いくつの都市の話をしたか覚えてるか?」
「11個だね?」
ビュッケは答えた。
作業員はニヤリと笑った。
「最後の一つの話をしてよ」
小さな機関車は目を輝かせて聞いた。
「それは・・・」
もったいぶっておきながら、作業員たちは口ごもった。
「どうする、お前が話すか?」
「いや、お前が話せよ」
「いやいや、シュヴァルツに話させるべきだ」
「おれはいやだよ!」
「あのー・・・べつに話したくないんだったら聞かないけど。何かあるんだね?」
「ああ。そこを通ると・・」
「人間ばかりじゃなく、機械も調子をわるくする」
「だからなるべく、人々はそのエリアには近づかない。」
作業員達が話さなかった、スコーピオ駅
そこにあったのは広大な砂漠、ダイアナ・デザート。
その地下に眠る、12の都市・最後の都市。
偏見を受けて、滅ぼされかけて
避難してきた国の人々がそこで暮らしている。
さまざまな話が一つの答えとなって繋がりかけていた。
「・・ま、実際に見たわけじゃないし、会ったわけでもない。
そんなに気にすることかな」
ビュッケはつぶやいた。
それよりも、列車の方が心配だった。
・・じっちゃん、大丈夫かい?
呼びかける。
彼が何を考えているのかはわからなかったが、
何も言わない背中から、
・・よけいな心配をするんじゃない!
という声が聞こえてきそうだった。
実際、とても大丈夫には見えなかった。
シルバー・デューク号が動き出したのは3時間も後だった。
酸性雨の嵐がやみ、青い空と煌びやかな太陽が
再び砂の上に敷かれた枕木と二本のレールを照らした。