ギルス2話の4

「おっかえりィ。」
列車が到着すると、車庫の中に機関車が待っていた。


「みなさん、長旅ごくろうさん。
じいさん、立ち往生したんだって?大変だったな!」
機関車はシルバーデュークに話しかけたが、
汽笛を鳴らすと彼はそっけなく通り過ぎ、はるか先に停車した。
荷台の上の小さな機関車と目があった。

「お前がビュッケバロンだな。おれは・・」

「セルバンテス・マーキス。じっちゃんと同じヘブンズキングダム鉄道出身の中型テンダー式機関車で。
ギルス鉄道では予備の機関車として導入されている」

「すげぇな。なんかパンフレットの紹介文を朗読したみたいだな。じっちゃんてとこ以外」

「普段は居眠りばかりしてるって聞いてる」

「こいつめ、噂の通りのおしゃべりだな!」
セルバンテスは大笑いした。




「局長、申し訳ありません」
機関士と助手が局長に頭を下げていた。

「顔を上げてくれ」
局長は丁重に言った。

「やはりあのルートに君たちをいかせたのは間違っていた。
誰も怪我がなかったのが幸いだったよ。」


「あの砂漠地帯の線路は、やはり閉鎖するべきなのでしょうか」
監督官が言った。

「うーむ・・」

「局長、お言葉ですが。」
機関士が口を挟んだ

「なんだね?」
局長が振り返る。

「あの駅は先住民達が利用させてほしいとの届け出があって設置したものです。
なるべくなら、
あのルートを残しておくのがいいと思います」

「ああ。・・走れる機関車がいればの話なんだがな。」

「走れる機関車か・・」

「とにかく、今ある様々な不安要素を取り除かなくては。」


「クイーン・ミリセント完成時の搬送はどうしますか」

「ビュッケの時と同様、シルバーデュークに迎えに行かせるつもりだったが、
そうはいかなそうだな。」

「となると、船ですね?」

「ああ。」


「ミリセントを自分で走って来させればいいと思いますよ」
ジョセフが言った。

「正気かね?」

「そんな重大仕事を引き受けるものがいるか?」

「それが機関士ですから。わたしがやりましょう」


「ジョセフ、そんなことを言っていいのか?」


「はい?」


「お前がここを出て行ったら・・」



局長の心配通りだった。

「わしは断固反対じゃな!」

シルバー・デュークはジョセフが話しかける前から反対した。

「おいおい、まだ何も話してな・・」

「お前さんがミリセントを運転して、あの砂漠を通ってここまで来ようというのじゃろ。
そんなことはゆるさんぞ」

「だって俺が言い出したことなんだし・・」

「反対じゃ!」


「一体なんの騒ぎだい?」
ビュッケはセルバンテスにささやいた。

「いや、また始まったか。ジョセフがミリセントのところに行ってる間
他の運転士を乗せたくないっていうことだ」

「それって・・もしかしてわがままってやつ?」

「そんなレベルじゃねぇ。だだっこだ」



「なにをこそこそ話してるんじゃ?」


「ギクッ!」

「き、聞こえてたのかいじいさん!」

ジョセフは笑った。

「わかったよ。じゃ、ミリセントは船でここまで運んでもらうしかないな。」

「・・・」
シルバーデューク号は黙ってしまった。

「あー・・かわいそ」
セルバンテスが同情した。

「つらいだろうが、我慢してもらうしかない」
ジョセフは静かに言った。

「そんなにひどい乗り物なの?」
ビュッケが聞いた。

「あれはひどい」
と、シルバーデューク。

「ああ。機関車が乗るもんじゃねぇよ」
と、セルバンテス。




「・・・」

「だが、危険な橋を渡らせるわけにはいか」


「おれが行くってのは?」


「え?」



「だけどお前ひとりじゃ長距離は走れないぞ?」

「おれが船にのって、アクア・リバーズへ行く。
ミリセントと一緒にあの路線を通って帰ってくる。
あの道、ひとりだったらつらいだろうけど
ふたりでだったらなんとかなると思うんだ」

セルバンテスが噴き出した。

「ば〜か。お前になにが出来るんだよ?お荷物になるだけじゃないか」

「う・・」

「いや、なかなかいい考えかもしれない」

ジョセフが言った。

「そう?」


「わたしとシルバー・デュークも、あの砂漠を抜けてお前と一緒にここまで来れた。
だから、乗り越えた経験のある君が一緒なら、ミリセント達も希望がもてるかもしれない。
よし、そうと決まったら引き受けてくれそうな機関士を探そう!行くぞ、アルフレート」
「はい!」


「あーあ、いっちまった。ほんとに大丈夫なのか?」

「セルバンテスは、あの砂漠を通ったことがあるわけ?」

セルバンテスは口ごもった
「い、いやおれは ねぇよ。噂を聞いたぐらいさ。
じいさんくらいの機関車じゃねぇとあの距離まで走れないんだぜ」

「たいしたことはない」
シルバーデューク号が言った。

「じっちゃん・・!」


「おいおい、じいさんあんた止まったんだろ?たいしたことじゅうぶんあるじゃねぇか!!」


「わしももう年期が入っているからな。ちょっとしたパイプのつまりも命取りになったりする。
だが、その新しい機関車なら、このくらいのことはたいしたことはないはずだ。」

「おれを信じてくれるんだね!?さすがじっちゃん」

「で、お前さんは何をするんじゃ?」

「エ゛ッ・・」

ビュッケは固まってしまった。

「わしはその機関車ならできるじゃろうといったんじゃが、お前が行く意味はよくわからんな」

「・・・」

セルバンテスが笑い出した。

「・・だそうだぜ?」

「なんだよ!大型機関車同士の親近感みたいなやつがあるわけ??」

「まったく・・だらしない機関士どもだ。わしの若い頃はこんな路線を怖がったりしなかったぞ」

「聞いてないし・・」

その夜、車庫の3台は一晩中こんな調子だった。



EDIT[2008/07/09 11:43] 鉄道ギルスComment:0

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する


  FC2ブログ 紹介予定派遣